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「銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 」(草思社文庫) ジャレド・ダイアモンド2013年03月03日 23時42分06秒

文庫本になったら読もうと思っていたのですが、ふと気付いてみると、すでに1年も前に文庫化されていたんですね。
知りませんでした。

ジャレド・ダイアモンドの歴史解釈はあまりにも有名です。
ヨーロッパ人が世界を征服したのは、彼らが優秀だったためではない。
ユーラシア大陸が東西に伸びているために、食物生産が同じ環境で東西に広がり、人口が増え、政治が生まれ、軍隊を持つに至り、家畜との共存で病原菌に対する免疫を獲得した・・・・という学説です。
一方で南北アメリカ大陸やアフリカは南北に伸びているため、そうはならなかったということです。
従って新世界の先住民は、征服者によってというよりも、征服者が持ち込んだ病原菌によって絶滅に追い込まれた訳ですね。

この本の最も素晴らしい点は、知識を横につなげる発想の柔軟さです。
ここで書かれていることは、もしかしたら、私たちは学校の教科書ですべて教えられているかもしれません。
しかし、世界史とか、医学とか、地理とか、考古学とか、動物学や植物学を独立して理解しただけでは、ダイアモンドさんのように本を書くことはできません。
彼は学問の横と横とをつなげることで、人類史の謎を解いていくのです。

もし自分の人生で、こういった本に類するような作品を書き上げることができたら、もうそれで人生の使命は終了かなと思えてしまう。
そういう大作です。

人類は病原菌との闘いにおいて、ワクチンという対抗策を発明しました。
そのワクチン産生に多大な貢献をしているのが、Vero細胞です。
千葉大のウイルス学教室で樹立した細胞ですね。
Veroは毎年世界で6000万人分のポリオワクチンを作っています。
それを考えれば、VeroはiPS細胞以上に人類に貢献しているかもしれません。
ノーベル賞をもらってもいいくらいです。

その一方で、人類は再び病原菌に破れようとしています。
理由は抗生物質(抗菌薬)の乱用による耐性菌(抗生物質の効かない細菌)の増加です。
薬を乱用しているのは医者。特に開業医。
日本は世界でもっとも抗生物質を多用している国です。
人類の進歩に背を向けるような行為を、インテリであるはずの医者がやっているのだから呆れてしまいます。

さて、本書に話を戻しますが、大ベストセラーになった作品ですから読んだ方も多いでしょう。
ブームに乗り遅れると何となく恥ずかしくで読む気がなくなりますが、そんなことは考えず、未読の方はぜひどうぞ。