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「情熱の階段 日本人闘牛士、たった一人の挑戦」(講談社)濃野 平2012年11月19日 21時20分43秒

情熱の階段 日本人闘牛士、たった一人の挑戦
たぶん大ベストセラーにはなっていないと思いますが、大変良い本です。

闘牛士になりたいと決意した若者が、言葉も分からないスペインに乗り込んで、次々に難関に挑んでいく自伝です。
最初の方は、ちょっと説明が多すぎて、描写が弱いかなと思いましたが、考えてみれば私たちは「闘牛」とは何たるか何も知りませんよね。
従って「闘牛」の説明が必要になります。

日本語の「闘牛」というのは明らかな「誤訳」。
牛と闘って殺すことが目的なのではありません。
「牛を走らせる」ことを目指す「芸能」であり、人と牛は共演者なんですね。
そして劇のラストには人が共演者である牛を屠るという破滅的なクライマックスがある訳です。

濃野さんの挫けない心は実にカッコ良いと思いました。
真の自尊心とは何か?
それは自分を信じることができる強い心と書いてありました。

ぼくはすぐに自分自身に疑心暗鬼になってしまうし、中味のないプライドを振り回すこともしょっちゅう。
50歳にもなって本当に未熟な人間です。
濃野さんを見習わなくていけません。
ま、未熟ということは、まだまだ成長できる余りがあるのかな、などと都合良く解釈してしまったりしますが。

「あとがき」はちょっと微笑ましかった。
出版不況で、いかに本を出すことが難しいかが書かれている。
よく分かりますよ。
ぼくが5年前に「命のカレンダー」を書いたのは、出版不況がささやかれはじめの頃でしたから、まだチャンスがあったのでしょう。
今、思えば本当に幸運でした。

本がベストセラーになって、闘牛の活動資金ができれば本当にいいですね。
ぼくは何の力にもなれませんが、遠く日本から応援しています。