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「別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判」(講談社)佐野 眞一2012年06月23日 22時59分45秒

別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判
現在ベストセラー中の話題の本です。

この本を読む前は、なぜ佐野さんがこの事件に興味をもったのかよく分かりませんでした。
「東電OL殺人事件」では、その理由がとても分かりやすかった。
でもこの事件はいろいろな意味で、「東電事件」とは逆の関係にあります。

だけど読み進めていくうちになんとなく分かってきました。
それは一言でうまく説明できないけど、「情念」がない連続殺人事件だからこそ、佐野さんは興味をもったのではないでしょうか?

本事件は、状況証拠のみで被告には死刑が言い渡されます。
そんなことで、死刑という判決が下っていいものかと思いましたが、やはり状況証拠にも相当な説得力があります。
前日の夜が快晴で、翌朝になったら一面雪が積もっているーーーーこれは夜間に雪が降ったと解釈する以外にないというのが検察の言う状況証拠の重要性です。

たしかにこの本を読めば、被告以外に犯人がいるとは考えられません。

この被告は膨大な「状況証拠」を残しています。
これが不思議です。
杜撰と言ってもいい。
「情念」に駆られた犯行ならばそれも分かる。

だけどこれは「計画的な犯行」。
それなのに、被告以外には犯人があり得ない証拠の数々。
大量に睡眠薬を手に入れて、大量に練炭を手に入れて。

手に入れた事実も隠蔽されていないし、現場や被害者の体内には練炭や睡眠薬。
これはなぜでしょう?
ある意味、ばれるに決まっているでしょう。
ばれてもいいと思っていたのではないかと思ってしまいます。

読み進めていくほどに、本の面白さが理解できました。
一番良かったのは、本の終盤で述べられる佐野さんの社会論。
事件の背景と今の社会環境を分析していますが、もうちょっと長く佐野さんの話を聞いてみたいと思いました。

さて、本書でも、いわゆる「佐野節」は健在で、やはりこの方の本の最大の魅力は、佐野さんが書いているという事実にあるような気がしました。

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