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社会と接点を持たない学問2012年06月14日 21時41分51秒

ちょっと必要に迫られて雑誌「小児外科」のバックナンバーを何冊も読んでいます。

専門書ですから専門家だけが理解できれば良いわけで一般の方あるいは世間と接点を持つ必要はありません。
現在読んでいる号も巻頭に業界の大物先生が文章を執筆していますがこれがもうほとんど専門家のぼくが読んでも意味が理解できない。
雑誌「小児外科」の読者は日本で何千人いるか知りませんがこの論文を最後まで読んだ小児外科医は十人もいないのではないでしょうか?

なぜこんなに読みにくい文章なのでしょうか?
それは小児外科学という学問が浮世離れしているからでしょう。
社会と接点を持とうとしないために言葉までそれにつられて成熟しないのだと思います。

小児外科という医療が何をする科なのか昔から理解されていないことを小児外科医は嘆きますがその最大の理由は患者が極めて少ないからです。

昔ある小児外科医がこう言いました。
「成人外科医は毎日大きなことをしている、しかし、すごいこはしない。小児外科医は毎日たいしたことをしていない、だけど、時にすごいことをする」。
なるほどと思いました。
つまり成人外科医は毎日胃がんや大腸がんの大がかりな手術をするわけですがそれってはっきり言って外科医ならば誰でもできるのです。
一方小児外科は毎日鼠経ヘルニア(脱腸)の手術をやっているわけです。ところが年に数回医学書にも載っていないような複雑怪奇な先天奇形の赤ちゃんを手術で治して見せたりするのですね。
このギャップの激しさが小児外科の特徴でありまた社会性のなさにつながっていると思います。

昨日講談社で雑誌「g2」の新編集長に挨拶したところ「小児外科というのはどこを手術するのですか?」と聞かれたので「子どもの腹の中です」と答えました。
すると編集長さんからは「あ、心臓ですね」との言葉。
もうこの会話は過去25年に250回くらいしています。
心臓は胸の中。
ぼくは心臓に触った経験はありません。