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「水平記―松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年」 (新潮文庫) 高山 文彦2012年05月23日 15時04分36秒

水平記―松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年
上下巻合わせて1000ページに迫る大著です。
さすがに、あっと言う間に読んだ、、、という具合にはいきませんでした。

この本には二つのことが書かれています。
一つは、松本治一郎の人生を辿った評伝。
もう一つは、松本治一郎が生きた時代の政治・経済・文化・生活です。
つまり近現代史。

松本治一郎だけを描くのならば、プロの作家であれば(どの程度の仕上がりかは別にして)できうることでしょう。
だけど、近現代史を書ききるというのはすごいことだと思いました。
どうやって書いたのか、イメージがつきません。
日本の歴史を描くと言っても、無数の表現の仕方があります。
それを、あくまでも民衆の側から、あるいは、部落解放運動の関連として書いていくというのは、作者の高山さんの筆力がいかにしっかりしているかを表しています。
1000ページ並の大著になるのは必然でしょう。

さて、松本治一郎さんという人ですが、この方は社会党左派に属していたようですが、別に社会主義社会を目指していた訳ではないでしょう。
松本さんの本質は、プラグマティズムにあると思います。
部落解放運動と天皇制との相対関係を見ていくと、戦時中には、断固として天皇制を打破しよう、、、などとはしていません。
むしろ容認することで利用していたと言えます。

だから松本さんが治安維持法で逮捕されて獄中で転向しないために何年も拘束される、、、などということもありません。

こういった態度は共産党シンパの人から見れば「ぬるい」と映るかもしれません。
だけど、逮捕されてしまって何の力も発揮できなければ、筋は通したと胸を張れるかもしれませんが、社会において何の役にも立っていないとも言えます。
こういった共産党の体質が、今日でも「独善的」とか「教条主義」とか言われ、党勢が拡大しない理由の一つだと思います。

松本治一郎はおそらく「資本論」などは読んだ経験はないでしょう。
その必要も無かったのでしょう。
だけどある程度、社会主義社会に夢は感じていたと思われます。
ですがソ連の劇場にも「貴賓席」があってがっかりしてしまう訳です。

松本さんは全人生の中で、様々なエピソードや名言を残しています。
ぼくが最も印象に残ったのは「天皇拝謁拒否」。
できませんよ、普通の人間には。
世論調査に対して「天皇制反対」と言える人はいても、天皇を目の前にして「拝謁拒否」ができる人はいないと断言できます。
この世に一人だ。
天皇がこの世に一人であると同様に、松本治一郎もこの世に唯一無比の存在です。

そして言葉でいえば、「生き抜け、その日のために」という台詞。
その日とは何でしょう。
もちろん、人間が解放されすべてが水平になる日のことでしょう。
ぼくのブログのタイトルも「歴史は必ず進歩する」。
ええ、そうです。その日に向かって進歩するのです。

それから「世界水平」という言葉も良かった。
第二次大戦終了から冷戦開始の頃までに、世界には偉大な政治家がたくさんいたなとつくづく思います。
それと比べて現代の政治がこれだけ劣化しているのは、経済が世界レベルで比較的改善されたからでしょうか。
冷戦が終結して、人間の生存への脅威が減ったからでしょうか。
松本治一郎さんの人生を辿ることで、自分の生き方が深くなる、そんなことを感じさせる作品でした。

追記)
吉田茂はアメリカが大好きで松本治一郎が大嫌いだったのでしょうね。
それって麻生太郎が野中広務を大嫌いだったのと同じですね。