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「下町ロケット」池井戸 潤 (小学館)2011年07月17日 22時20分02秒

下町ロケット
400ページ超の作品ですが、一気読みでした。

エンターテインメント小説として、最高に面白いと言えますが、作品の完成度は明らかに「空飛ぶタイヤ」の方が上です。
池井戸さんは「空飛ぶタイヤ」で直木賞を受賞すべきだったと思います。
しかし直木賞ではこういうことがよくあるんですね。
作品にではなく、作家に賞を与えているのではないでしょうか?

主人公=正義の熱血漢が、次々とハードルを越えて、最後に壮大なカタルシスが待っているというのは、まったく「空飛ぶタイヤ」と同じ。
いえ、この本の前半の方は、「空飛ぶタイヤ」と設定が違うだけ、まるで焼き直しのように展開が同じでした。
主人公のキャラ設定はうまくいっていたでしょうか?
昔=研究者、今=中小企業のオヤジというキャラがどうも定まらなかった気がします。

筆力というか、表現力に関しては、今回はちょっと弱いなという部分も散見されました。
「空飛ぶタイヤ」のほうが良かったし、比べるのはナンセンスかも知れませんが、ノンフィクション作家の方が濃密な文章を書くかなという気が。
ま、そういうことを言い出すと、純文学作家の方が・・・という話になってしまいます。

ですが、なんでそんな比較をするかと言えば、リアリティーの問題です。
「空飛ぶタイヤ」は、現実にあった事件を題材にしているだけにリアリティーがあった。
「下町ロケット」では、次から次に出てくる「悪役」(敵も身内も)が、あまりにも現実味が無くて、主人公に試練を与えるために無理矢理ハードルを作っているなという印象がありました。

今後どういう作品を書いていくのか、大いに楽しみです。