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「我が家の問題」奥田英朗 (集英社)2011年07月09日 22時49分56秒

我が家の問題
奥田英朗さんは、ぼくが最も好きな作家の一人です。
「純文学」ではないが「低俗」ではない文学を、「中間小説」と言ったりします。
人によっては、エンターテインメント小説とか大衆文学とか。
ま、言葉による定義はどうでもいいのですが、単純に「面白い」小説ということで評価すれば、ぼくは奥田さんが日本で一番面白い小説家だと思っています。

なぜ面白いのでしょう?
一つの理由は、奥田さんがへそ曲がりの天の邪鬼だからです。
そういう斜めにものを見る視点が実に面白い。

そして人間の心の機微を知り抜いているということ。
たぶんこれは人を観察しているからでしょう。
特に、女性心理をなぜここまで、人を納得させるように書けるのか、本当に不思議です。

最後に言えば、文章がうまい。
奥田さんは意識して、文章から「主語」を抜いていると思います。
日本語を欧米の言語と比べると、主語を必要としない構文構造に最大の特徴があります。
逆に言えば、主語の多い日本語は読みにくいのです。
奥田さんはかなりその辺を意識しているとぼくは思います。
だからテンポがよく、読みやすい。
ぼくもけっこう真似をしています、奥田さんの文章。

さて、今回の短編集も、めっちゃ面白かった。
深夜の布団の中で、つい、吹き出してしまったことも。
だけどそれだけではなく、最後の作品、「妻とマラソン」は思わず涙腺が緩んでしまった。
この人はね、こういう作品もうまいんです。

笑って泣いて、うんうんと納得して、あっと言う間の読書でした。
傑作です!