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大江健三郎を捨てる2010年07月27日 20時12分35秒

芽むしり 仔撃ち
高校生の時に、近代文学鑑賞クラブに入って、ひと通りの近代文学をかなり読みました。
夏目漱石とか三島由紀夫とか。
梅崎春生とか田宮虎彦とか。

しかしそういった本は全部捨ててしまいました。
本を収容できるスペースを持っていなかったからです。

それでもどうしても捨てられない本があって、それは大江健三郎の小説です。

現在僕は自分の書斎を有するようになりましたが、その書斎には壁一面に本が並んでします。
これまで、本棚の奥の奥にしまってあった大江健三郎も、晴れて表舞台に出てきた訳です。

「命のカレンダー」と「命のダイアリー」を書いた時、多くの作家の影響を受けているなと自分で思いました。
文法とか構文は、本多勝一。
ドラマ性は、柳田邦男。
叙述は、梁石日(ヤン・ソギル)。
強調は、楳図かずお。

ま、そんな具合です。

しかし僕がこれまで50年近く生きてきて、「物語る」ということに最も影響を受けたのは、やはり大江健三郎です。

短編「死者の奢り」の最初の一行を読んでみてください。

・・・・・
死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、頭をおしつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている。
・・・・・

こういう文章はやはり普通の人間には書けないと思うのです。
そういう思い入れがあって、文庫本を30年以上も保存していました。
そして昨夜それらを手にすると、、、
カビが生えてしまっている。

これはもう捨てるしかないと思います。
本はいくらでもAmazonで買うことができる。
絶版になることは永遠にないでしょう。
本を集める趣味はないので、手元になくてもいいのではと思います。
だいたいからして、僕が死んだら僕の蔵書なんて、全部ゴミですからね。

どれ、「芽むしり 仔撃ち」でも買おうかな。